導入事例

緑と黒潮につつまれ清流と天然の良港にめぐまれた美しいまち宮崎県「日向市」

自治体紹介

日向灘に面し、温暖で降水量が多い一方で日照時間は全国トップクラスです。また細島港という天然の良港に恵まれ、古くから県のゲートウェイとしての役割を担ってきました。県内有数の工業地帯としても知られています。平成16年9月24日に東郷町長から日向市長に対し、「1市1町」での法定合併協議会設置要請があり、平成18年2月25日、日向市と東郷町が合併し、(新)日向市が誕生しました。

日南市公式ホームページ : http://www.city.hyuga.miyazaki.jp/

事業概要

2012年1月16日に、宮崎県9市で初めて「自治体クラウドシステム」での本稼働を迎えられた日向市様に自治体クラウド先進事例として訪問させて頂きました。
宮崎県 日向市 企画情報課 課長 大石真一様ほかの皆さまにクラウドシステム導入の背景や今後の取り組みについてお話し頂きました。

宮崎県 日向市 企画情報課 課長 大山真一様

大石 真一様
宮崎県 日向市
企画情報課 課長

日向市の各種計画の総合調整や情報化政策等に従事され、自治体クラウド導入に尽力されております。また、自治体間の広域連携による持続可能な地域づくりにも積極的に取り組まれております。

日向市様における「自治体クラウドシステム」導入の背景
日南市役所

Gcom(以下――と記述):日向市様では、電算システムをデータセンター(延岡市:旭化成ネットワークス)に集約し、構築されたネットワークを通じて複数の自治体が利用できる「自治体クラウドシステム」を平成24年1月16日に本稼働されました。
宮崎県内では昨年の門川町様に次ぎ2番目、宮崎県9市では初めての運用開始となったわけですが、「自治体クラウドシステム」導入を決定された背景を教えていただけますか。

(川端課長補佐):これまで御社の汎用機システムを利用していましたが、ホスト(自庁方式)はきめ細かい対応ができる半面、カスタマイズが増加し、日向市独自のシステムになっていたため、法改正などの対応を容易に行えませんでした。
標準パッケージが利用できるような環境になれば、もっと簡単でかつ作業量も削減できるのではないかと思い色々と検討していました。また、日向市はクライアント端末が約900台あり、維持管理にかかる作業も大変でしたので、インストール作業の手間がほとんど不要でクライアント端末が利用できるシステムがないかを検討していました。

――そうだったのですね。

(大石課長):今までの自庁方式、つまり自庁でシステムや機器を所有し運用するという方式では、永年の利用に伴いプログラムが複雑になり、コスト面がかさむなどの課題が出てきました。
また、2011.3.11に発生した東日本大震災を受け、未曾有の災害が発生した際のデータセキュリティの脆弱性が浮き彫りになり、住民の方のデータを守るという危機管理の要因がぐっと大きくなりました。
日向市の本庁舎は耐震的にあまり強くないのですが、これまではあまり意識することなく、住民の方のデータを取り扱っていましたが、日向市で同様の災害を想定した場合、このままの環境ではセキュリティ面が一番大きな弱点となります。
そこで、データセンターという地震にも強く、災害にも強いという強固な建物の中に住民の方のデータをおくことでリスクを軽減することを検討したところ、メリットは非常に大きいと感じました。
データセンターが延岡市という近隣にあったことも大きな決め手になったと思います。

――自治体クラウド導入の背景としては、コスト面とクライアント端末の維持管理およびセキュリティ面を考慮し、最適な方法を模索されていたということでしょうか。

(大石課長):そうですね。その3つが日向市の大きな課題となっていました。

「自治体クラウドシステム」導入の経緯
川端 次郎様

川端 次郎様
宮崎県 日向市
企画情報課
課長補佐兼統計係長

――日向市様の「自治体クラウドシステム」導入までの経緯について教えてください。総務省の実証実験への参加や「自治体クラウドシステム」導入において重要視された点がございましたら、教えていただけますか。

(川端課長補佐):先述しましたとおり、日向市はホストコンピュータを使って、永年独自のシステム構築を行ってきました。そのため、きめ細かい対応ができるというメリットもありましたが、法改正に基づく修正パッチなどを適用する際、非常に難しく時間がかかっていました。
本来は標準的な修正パッチを適用すれば、年次の法改正などが簡単にできるのですが、かなり独自のカスタマイズがありましたので、日向市のシステムに併せる形で適用しなければならず、容易に適用できないというデメリットが出てきました。
それとともに、手間やコストがかかる割には結果の保証がないというか、日向市向けの専用の修正となるため、修正パッチを適用する際も様々な検証をしなければ結果の保証ができないことが増えてきました。できればそういう部分を無くしていきたいという思いがありまして、標準パッケージのシステムに乗り換えようという動きになったと思います。
このような現行システムの色々な問題点を感じていた時に、ちょうどクラウドの話、実証実験の話が総務省から出ていました。

――「クラウド」と言っても当初は雲の上の話のようで漠然としていたと思いますが、取り組むことになったきっかけは何だったのでしょうか。

機関車

(大石課長):一番大きかったのは、県のリーダーシップですね。大分県と宮崎県が組んで、共にリーダーシップを取って進めてきましたので、それが大きかったと思います。一つの市だけではなかなかできなかったと思います。まとまらないというか…。ですが、県が自ら動いて「やるぞ!」と引っ張っていってくれれば市町村は追従できるのではないでしょうか。それが大きかったと思っています。

――県の力強いリーダーシップがあったから取り組むことができたのですね。

(大石課長):クラウドというのは、一つの自治体だけではなかなか決断しにくいと思います。そういう意味では、宮崎県は出だしとしては非常に良かったのかなと思います。5つの団体(日向市・延岡市・門川町・串間市・綾町)が入って、実証実験があって、まず5団体がドンとスタートして…そうするとあとの自治体は入りやすいと思いますよ。いきなり、どこかのクラウドシステムを使いませんかと提案されてもなかなか入りにくいと思います。

――そうですね。

(大石課長):議会からの問い合わせもあり2回ほど勉強会を開きました。難しい内容でしたが、丁寧に説明して今回のクラウド化について理解いただきました。

「自治体クラウドシステム」導入で苦労した点

――「自治体クラウドシステム」導入で苦労した点などを教えてください。

(川端課長補佐):実証実験の期間(2年間)では、様々な業務ごとの課題が出てきました。
詳細な数字までは分かりませんが、各業務システム、例えば個人住民税や固定資産税、住民票のシステムそれぞれの担当者の部会があり、その中で協議を進めてきました。各部会の中での要望事項は数十件単位で上がっていたと思います。
全システム(20数システム)でおそらく千件以上の要望があったと思いますが、それぞれの部会で協議し、各団体が本来共通に必要とする部分だけをクラウド化しました。それを約数百件に絞ってクラウド版に反映させたということです。そのように受取っています。

――BPRについてはいかがでしょうか。

花壇

(大石課長):原則としては、システムに業務をあわせるというスタンスで進めていましたので、必要最低限というか、ここだけは譲れないというような部分についてはカスタマイズをお願いしました。
基本的にはアウトプット系といいますか、帳票に出力する部分に対してカスタマイズをお願いし、システムのオンライン系については、カスタマイズは極力避けてきました。ですから大きなシステム変更というのはなかったと思います。

――部会には皆様それぞれに参加されたのでしょうか。

(大石課長):そうですね。それぞれ分野別に分かれて参加しました。かなり厳しい場面も色々ありましたが…。原課としては今まであった機能が無くなるという時には容易に受け入れてもらえませんので。
パッケージシステムなので基本的には、アウトプットの部分は専用帳票を作るのではなく、CSVファイルなどで汎用的なファイルを抽出し、ユーザが加工して使うという仕様ですので、その考え方をできるだけ活かす形で原課には話をしていました。
それでカスタマイズ費用としては相当少なくなったのではないかと思います。

――アウトプットに関しては、出力される帳票や必要な項目がそれぞれの団体で違ったのではないでしょうか。

(川端課長補佐):法令で定められた必要な出力項目は当然対応していただくのですが、日向市独自の住民サービスとして提供している内容もありますので、サービスレベルを落とさない意味合いで標準パッケージにはないけれども、一つ項目を増やして出力していただきたいという対応はしていただきました。もちろん、今後の修正パッチが適用できないような形にはしないということで進めてきたつもりです。日向市独自のカスタマイズが入ることによって修正パッチの適用ができないということであれば、元の木阿弥ですから。(笑)

児玉 秀雄様

児玉 秀雄様
宮崎県 日向市
企画情報課
情報政策係長

(児玉係長):パラメータを活用することである程度自由に設定できるようですから、共同利用にも向いていると思います。
(大石課長):住基の関連は、法に則った基本的なシステムでもともと動いていましたので、比較的日向市のカスタマイズは少なかったと思います。税の関連は、もちろん地方税法というのがありますのでそれに則っているのですが、運用についてはカスタマイズが入っています。例えば、住民税や資産税の当初課税の流れなどは、各団体で色々工夫をして積み上げてきたものがありますので、そのようなカスタマイズ部分も含めて、これからの当初課税を迎えた後、評価されるのではないかと正直思っています。
税関係の当初課税、国保、介護と順次ありますのでそれらの当初課税がうまくいくことで今回のクラウド化が成功したといえるのではないでしょうか。最終的な評価は6月末になると思います。
先行した門川町さんが成功していますので、うまくいくであろうとは思っています。(笑)

――私もうまくいって欲しいと願います。では、自治体規模が違うことで影響する業務はありましたでしょうか。

(川端課長補佐):その一例としては毎日の収納処理、日計処理があります。各金融機関から納付書が送られてきて、収納データベースに反映させていくという処理ですが、隣の門川町さんであれば、日向市の約1/3の規模ですので、それに見合った件数なんですね。

市役所石碑前

日向市はその数倍ありますので、それをどう処理していくかといのはまた違うレベルの話になります。自治体規模が小さければ職員で簡単に対応できるのですが、日向市では職員だけの対応では難しいため、オーエーワーカー(以下OAWと記述)さんにサポートを受けたり、OCRの読み取り装置に原課職員が入力しやすい支援システムを追加導入するなどの工夫はしたつもりです。
この辺は団体の規模で同じシステムを使うにしても対応が変わってくると思います。延岡市さんは更に日向市の倍ですからね。また違った工夫をされているのではないかと思います。

「自治体クラウドシステム」導入の効果
石像

――「自治体クラウドシステム」の導入における効果について教えてください。具体的にどのような事がありますか。

(大石課長):一つはコストの削減でしょうか。
これまでは、汎用機を使ってシステムエンジニア(以下SEと記述)さんやOAWさんに常駐していただいて運用していたのですが(現在はまだそうですが)、新年度からはSEさんやOAWさんの人員を削減し、常駐される方の人数も減ってきますので、そういった人件費削減というのが一番大きいのではないかと思います。

――新聞記事によると、10年間で約2億4600万円の削減を見越しているということですが、これくらいの経費削減が実現できそうでしょうか。

(大石課長):現段階では、あくまでも目標として捉えてください。
実際やってみると様々な問題が出てくるでしょうから、例えば、まだクラウド化されていないシステムの連携の問題などがありますので、計画通り人件費を削減できるかどうかは明確ではありません。
できるかぎり削減できるように努力したいと思っています。

――その他に汎用機システムではできなかったことが新システムになってできるようになった内容というのはありますか。

(香月様):データ抽出が容易にできるようになったことでしょうか。
これまでは、電算室に依頼しなければ各システムからデータ汎用抽出をすることができませんでしたが、新システムでは、各担当者レベルでできる仕組みが搭載されていますので、その機能を使えば、住民票のデータや税のデータをCSVファイルで抜き出すことができるようになりました。

香月 卓也様

香月 卓也様
宮崎県 日向市
企画情報課 主事

職員のスキルにもよりますが、CSVファイルを使って自由に加工したり統計を取ったりすることができるようになったことで、高度な使い方になるかもしれませんが、データの流用的な使い方ができるのではないかと思います。
(川端課長補佐):また、クラウド化することによって帳票の印刷、特に年度当初の大量印刷などをいわゆるデリバリーサービスに切り替えました。業者さんの業務ラインプリンターから帳票を出力していただき、ブッキングされた状態で配送してもらっていますので、職員の手間としてはかなり削減されていると思います。
現時点では、高速プリンターや汎用機は本庁にあるのですが、今後は必要なくなるため、その分の費用を削減できます。それが、便利になった点かというと分かりませんが…。コスト的には機器のリース料が無くなる代わりに、新たにデリバリーサービスの費用が発生しますので、メリットとは言えませんが、クラウド化することで大きく変わった点だと思います。

今後の展開

――今後の更なる業務の効率化や住民サービスの向上について取り組まれる事を教えてください。

(大石課長):平成25年度から、住民サービスの一つとしてコンビニ収納の導入を検討しています。Acrocity(アクロシティ)はそういう機能にも対応していると聞いておりますので、クラウド化に併せて取り組みたいと思います。

――コンビニ収納ができるようになれば住民の方もとても便利になるでしょうね。

大石様

(大石課長):今後の働きかけとしては、御社のシテムを利用している2市1町で、システム改修についても共同で提案することも考えています。更には、新たな加入自治体の促進を行ってコスト低減などにつなげていければ良いと思っています。
また、3つの団体で御社とどういった形になるかわかりませんが、協議会のようなものを作って進めていくというような提案・提言をしていかなければいけないと思っています。

――共同利用していただく自治体様が増えれば増えるほど割り勘効果は高まりますからね。

(大石課長):実際に、他の自治体でもいくつか話があると聞いていますので、県内で参加自治体が増えていくと本当にありがたいと思います。

――その他には何かございますか。

大石様

(大石課長):独自の取組みとして広域連携での活用を考えています。 例えば公共施設をみんなで連携して使うとか、そういった事でしょうか。もともと県北の自治体はつながりが強いのですよ。国自体も広域連携ということを盛んに言っていますし、一つの市町村だけで様々な住民サービスを提供することが難しくなってきている現状がありますので、他の自治体と連携した取組みを展開していきたいと考えています。
それに合わせて公共施設の共同利用とかサブシステム上で可能であれば取り組んでいきたいと思います。

(川端課長補佐):希望的な話になりますが、御社がクラウドシステムを構築されていますので、ぜひ色々なベンダーさんにも入ってきていただきたいと思っています。庁内では、各原課で固有に利用しているサブシステムがまだまだありますので、そういうシステムを扱うベンダーさんが延岡市にあるデータセンターにクラウドシステムを構築していただければ、複数の団体で利用できるのではないかと思います。
コスト削減やハードウェアが不要などのメリットが出てきますので、そういう方向に進むといいなと、これを契機にそういう流れになればいいと思います。まあ、それはベンダーさんが考えることで、我々だけではなかなか進まないのですが。(笑) 今、そういう要望を各ベンダーさんに出していますので、クラウド化が図られるのであれば、それを利用したいと思っています。今後システムを選定する上で、クラウドシステムであるかどうかという事が、一つのポイントになってくると思います。

――貴重なお話をありがとうございました。今後も日向市様の益々のご発展を期待いたしております。

市役所の方々

(注)記載しております職名等の情報につきましては、2012年3月現在のものです。