導入事例

地域経営型包括支援クラウド構築事業開発実証

自治体紹介

延岡市は、東九州に位置し、九州山地を背に、清流五ヶ瀬川が貫流し、日向灘に面した、産業と歴史と文化とスポーツが息づく「市民力・地域力・都市力が躍動するまち」で、平成18年に《山の文化の北方町》、《海の文化の北浦町》、19年に《山と川の文化の北川町》との一市三町合併を経て、九州では二番目に広い面積を有し、人口約13万、商工農林漁業の各産業が均衡する、新しいまちに生まれ変わり、さらに見所いっぱいになりました。

延岡市公式ホームページ : http://www.city.nobeoka.miyazaki.jp/

事業概要

平成25年度に宮崎県北定住自立圏2市・1町で、総務省の「地域経営型包括支援クラウド構築事業開発実証」に参画された延岡市様に、クラウド先進事例として訪問させていただきました。宮崎県延岡市 情報管理課 課長 岩切様と業務管理監 稲田様に、今回の開発実証の背景や今後の取り組みについてお話しいただきました。

企画部 情報管理課 課長 岩切様 企画部 情報管理課 業務管理監兼課長補佐•情報開発係長 稲田様

延岡市の電子自治体へ向けた企画・構築や、情報システム全般の最適化および運用業務でご活躍されています。また、全国に先駆けて県内2市3町で自治体クラウドの導入・運用に取り組まれ、利用システムの標準化と地域への利便性向上をご検討されながら、自治体クラウド発展に尽力されています。

開発実証に至った経緯と背景

平成21年度に実施された「自治体クラウド開発実証事業」に続いての実証事業ですが、経緯と背景について教えてください

愛宕山から撮影した延岡市夜景

『今回、延岡市、日向市および門川町の3自治体で実証実験を行いました。3自治体においては、平成21年度に実施された「自治体クラウド開発実証事業」で得たノウハウを活用し、門川町が平成23年3月、日向市が平成24年1月、延岡市が同年2月からクラウドシステムでの基幹系システムの本運用を行っています。また、この3自治体は宮崎県北定住自立圏の構成団体であり、同じ生活圏内で広域的なサービス基盤としての活用も視野に入れ、自治体間の連携をさらに深めるとともに他自治体の参加を促進しながら、さらに広範囲でのクラウドシステム運用を行うことを目指しているところです。』と岩切氏は語ります。

『現在のクラウドシステムの運用により、経費削減、業務効率化など内部的な効果は十分見えてきますが、クラウド化による住民、企業および外部機関等に対するサービス向上が課題であると、副市長を中心としたクラウド推進メンバーで次の取組みを模索していました。そんな中、今回の「地域経営型包括支援クラウドモデル実証事業」はこの課題を解決し、これからの自治体クラウド利用の発展の糸口につながる事業であると考え参加した次第です。
本事業での取り組みにより、住民の皆さんの利便性も増し、魅力的な自治体クラウドシステムが実現されていくことを期待しています。』と岩切氏は振り返ります。

開発実証の目的

開発実証を実施するにあたり目的を教えてください

チキン南蛮(発祥の地)

今回の実証事業では、地域経営型包括支援クラウドモデルとして「健康管理」を基盤としたクラウドシステムを構築し、「住民サービスの向上」・「民間事業者との連携強化」・「地方公共団体における業務の効率化」・「地域課題の解決及び地域活性化への貢献」の4つの視点で効果を検証することを目的としました。

1つ目に「住民サービスの向上」ですが、『現在、住民の方は来庁されたり、役所にお電話いただき、検診の予約をされていますが、インターネットを活用することで、横断的に各検診予約ができ、住民サービス向上につながると考えました。また、自治体の開庁時間に囚われず、インターネット予約ができるため24時間365日対応が可能となり、住民の利便性が向上されます。さらに、保健師による訪問指導において検診結果などの情報を帳票でなく、タブレット端末を利用し、実際の画面で様々な情報を照会することで、住民が「健康」を意識できる環境を提供することができる。』と稲田氏は言います。

2つ目に「民間事業者との連携の強化」ですが、『現在、検診機関と自治体との間では電子媒体若しくは、帳票で検診対象者・結果データ等の授受を行っています。”検診機関側では自治体毎に授受手続きが必要である””自治体側では機密性の高いデータの授受が必要である”といった課題があり、作業自体も煩雑となっています。この作業をネットワーク経由してやり取りができるようになると、検診機関の担当者と自治体職員の負荷は大きく軽減されると見込まれる。』と稲田氏は語ります。

3つ目に「地方公共団体における業務の効率化」ですが、『最新の検診情報を随時電子データで取り込むことができるようになると、自治体側の情報取込みに対して柔軟なスケジュールを組むことができます。また、従来紙媒体に記載された情報をシステムに手入力していたものが、電子データで取り込むことができるため、入力時間の削減、入力誤りを防ぐことができる。』と稲田氏は挙げます。

4つ目に「地域課題の解決および地域活性化への貢献」ですが、『医療機関・地方公共団体が一体となり、住民の最新の健康状態に応じたサービスを提供することで、疾病などを事前に予防するなど、社会保障費の削減が見込めます。さらに、同一生活圏内で同じサービスを提供することができるようになると考えます。このサービスの提供により健康管理の面から定住の意志も高まり、住民の流出を防ぐことも期待している。』と岩切氏は語ります。

開発実証の概要と検証結果

開発実証の概要と検証結果について教えてください

今回の開発実証では、前段の目的を達成するために、「Web事業予約」「データ授受」「発生源入力」「オープンデータ公開」の4つ検証を行いました。

平成25年度データ

1つ目の「Web事業予約」ですが、『開発したシステムを使用し、検診予約事務をシミュレーションしました。まず、自治体運用の適合性を検証するため、延岡市・日向市・門川町の検診事務運用について確認しましたが、自治体の規模と現状の受付方法が異なるため、受付事務の多くは一致していませんでした。しかしながら、特定健診については受付事務が類似しているため、Web事業予約を活用することで受付時間の削減が見込めると判断しました。次に、開発したWeb事業予約に検診予約の登録を行いましたが、大きな機能の欠落はなく、多少の機能見直しは必要ですが、本運用へ向けての機能改善で解決できるものでした。この検証では、自治体職員の受付事務に係る電話対応や来庁対応の作業時間を削減でき、作業効率化が見込めました。住民は、役所の開庁時間を気にすることなく、自分の都合の良い時間に予約ができ、利便性の向上が期待できそうです。』と稲田氏は語ります。

2つ目の「データ授受」ですが、『現在、自治体と検診機関との間で、検診予定や検診結果のデータ受け渡しを郵送で行っていますが、お互いの事務効率を向上させるため、ネットワーク経由で送受信ができるかをシミュレーションしました。データの転送レスポンスを懸念しましたが、データ量が少ないため、速度について問題なく送受信することが確認できました。しかし、本運用ではセキュリティを確保するため、ネットワークに接続する送受信用パソコンと検診機関が使用するシステムを直結することができないため、その間のデータ受け渡しは電子媒体でせざるを得ない結果となりました。よって、データ取込みの事務作業は、大幅な削減が見込めないのが実情です。』と稲田氏は言います。

3つ目の「発生源入力」ですが、『乳児訪問で行っている母親のアンケートを、紙台帳からタブレットに変更しました。乳児の体重増加計算とアンケート機能のシステムを開発し、訪問時の聞き取りや訪問先の母親にも操作いただき、その事務効率を検証しました。最近は、スマートフォンなどの普及により、タブレットの利用と操作についてほとんど抵抗なく、有効的に活用できることが確認できました。』と稲田氏は言います。

4つ目の「オープンデータ公開」ですが、『今後、国が進めようとしている「公共クラウド」を見据えて、行政が保有する情報の公開可能性を検証しました。健康管理事業の分野において、公開可能なデータ(オープンデータ)の分析と、公開可能なデータを公開した場合の有効性について、外部機関(九州保健福祉大学)の有識者に協力いただきました。検診結果のデータを公開することで、その分野の専門知識を有する方々が分析できるようになります。
鮎やな その結果、地域・地区毎の健康度分析や早期の疾病予防が可能となり、住民の健康増進に資することが見込まれる事が分かりました。一方で、セキュリティ対策について万全な対策が必要となります。「氏名」や「生年月日」を除き、個人を特定できないように、情報を公開したとしても、自分の情報が無許可に使用されることに抵抗感を持つことは考えられます。学術機関・医療機関等に公開すれば、情報を有効活用できることは見えましたが、超えなければならない課題も見えてきました。』と岩切氏は挙げます。

開発実証で苦労した点

庁内との連携(プロジェクト内でのやり取り)で苦労した点について教えてください

延岡天下一能

『開発実証に参画する時点では、本運用を行うか庁内合意を得られていない状態でした。そのため、事務運用を担当する原課職員には十分な効果が得られることを説明し、本運用を目指すプロジェクトであることを理解してもらい、参加していただくことに苦慮しました。しかし、開発実証に携わる中で、将来十分な業務の効率化が得られることに原課職員の期待値も高まっているところです。』と稲田氏は言います。

ベンダーとの連携(プロジェクト内でのやり取り)で苦労した点について教えてください

『クラウドサービスを利用するに際し、庁舎内での導入作業はありませんでした。前回の「自治体クラウド開発実証」時も同様でしたが、クラウドの導入作業になると要件定義やシステムテスト以外の工程は、システムエンジニアの作業主体はデータセンターなどになるようです。そのため、ベンダー側の作業進捗は机上確認となり、サービス(アプリケーション)を実際に確認するまでは不安でしたが、最終的には遅延することなく開発実証を終えて安心しました。』と稲田氏は言います。

期待される効果および今後の展開

『今回の開発実証の結果を総括すると「Web事業予約」や「発生源入力」は、住民の利便性向上や原課職員の業務効率化に効果を発揮できると評価しています。そのため、今後の本運用を目指して、今年度は一部課題として残る機能改善に取り組んでいく予定です。このサービスを皮切りに、住民サービスの向上につながる自治体クラウドに期待します。』と岩切氏は語ります。

貴重なお話をありがとうございました。今後も延岡市様の益々のご発展を期待いたしております。

市役所の方々

(注)記載しております職名等の情報につきましては、2014年6月現在のものです。