導入事例

自治体紹介

 薩摩川内市は薩摩半島の北西部に位置し、南は県都鹿児島市といちき串木野市、北は阿久根市に隣接する本土区域と、海越えで上甑島、中甑島、下甑島で構成される甑島区域で構成されており、面積は東京23区同程度ながら人口密度は100分の1ほどです。東シナ海に面した変化に富む白砂青松の海岸線、市街部を悠々と流れる一級河川「川内川」、藺牟田池をはじめとするみどり豊かな山々や湖、地形の変化の美しい甑島、各地の温泉など、多種多様な自然環境を有しています。
 本市が有するこれらの多彩で美しい自然環境は、川内川流域が県立自然公園、藺牟田池が県立自然公園、甑島が県立自然公園から2015年3月16日に国定公園に指定され、人々に親しまれています。

 総面積:682.92平方キロメートル (※平成28年2月24日国土地理院発表)
 総人口:96,076人(平成27年国勢調査)
 世帯数:40,686世帯(平成27年国勢調査)
 (薩摩川内市ホームページより抜粋)

薩摩川内市のホームページ : https://www.city.satsumasendai.lg.jp

事業概要

 薩摩川内市では「住民サービス向上」「職員負担軽減」「事務手続きの明確化」をコンセプトとして平成21年度から総合窓口システムの検討を開始し、平成25年2月に本庁で総合支援型窓口システムを本格運用、その翌月には支所においてシステム運用を開始しました。総合支援型窓口システムでは、問診事務手続、申請書ライブラリ、手続書作成・読み取りといった機能を実装しています。 また、システム構築だけではなく受付窓口の改善や職員導線の再検討などの取組みも同時に行い、「待たない」「書かない」「迷わない」窓口を実現しました。

総合窓口検討の背景

 総合窓口検討にあたって、「まずは薩摩川内市を取り巻く課題を捉えることにしました。人口減少、高齢化、住民ニーズの多様化、職員定数の削減といった背景がある中、広い市域で均一した住民サービスの提供を行う必要がありました。これまでは、住基カード・マイナンバーカードを利用した自動交付機やコンビニ交付、移動連絡車の活用、海底ケーブルを活用した島嶼部との格差是正といったインフラ面の整備を中心に行ってきました。 その一方で、窓口自体の改善には着手できていなかったため、ボトムアップの形で総合窓口の検討に至りました。検討にあたっては住民視点、職員視点、組織視点の3つの視点から課題を洗い出し、その課題解決に向けて様々な検討を行いました。庁舎レイアウトや組織体制など制約が多い中で、職員一人一人が日々課題意識を持って前向きに取り組んでいきました。」(瀬戸口様)

総合窓口の取組みにおけるコンセプト

 先に述べられた課題解決に向けて、まずはコンセプトを決めて総合窓口の取組みを実施しました。具体的な課題をピックアップすると、次のようなことが分かってきました。
「住民視点では、ライフイベントに伴う複雑な手続きの負担が大きく、受付待ちが長く届出に時間がかかるという不満がありました。さらに複数の窓口で受け付けがあり、数多くの申請書・届出書を書くのが大変だという声も多くありました。職員視点では、定数削減による本庁職員の負担増や、支所職員一人への業務集中といった課題があり、専門的知識が必要な場合が多いため、作業負荷が増大していました。その結果、住民への説明不足やケアレスミスが発生するという事態も見受けられました。組織視点では、機構改革による事務分担の見直し、離島や遠隔地といった要因により住民サービス維持が困難となっている課題がありました。また、事務処理マニュアルが統一されておらず属人的な対応となっていたり、事務処理が複雑化し書類の種類が多く探し出すだけでも時間を要するような状況でした。」(福重様)

これらの具体的課題を解決するために以下のコンセプトを掲げ、総合窓口の取組みを推進していきました。

総合窓口の取組みにおいて苦労した点

 総合窓口を推進するにあたって、様々な苦労があったと振り返りました。
「総合窓口の構築には全庁的な取組みが必要でしたが、組織間の調整事項や職員の温度差を埋めていくことにかなりパワーを要しました。そういった意味では、全体を見通して事業を推進するリーダーの存在も欠かせないポイントでした。また事業を進めていく中で、住民視点を中心にものごとを検討していった結果、職員視点さらには組織視点にも良い影響を与えながら職員全体の意識まで変わっていくことを実感しました。」(瀬戸口様)

 また、窓口改善やシステム化を行う上では次のような点に苦労しました。
「住民の滞留や職員スキルを考慮すると、完全なワンストップ型の採用は難しいと考えています。うまく住民を誘導する形態を採用することで、大きな組織変更や事務変更に伴う混乱を防ぐことができました。ただし、事前に最適な窓口形態をイメージして様々な面から改善に取り組む必要がありましたし、システム以外の課題解決方法も組み合わせていかないと、想定した効果が出ないことも危惧していました。システム構築にあたっては試行錯誤の連続でしたが、最適な業務の流れを職員一丸となって検討し、システム事業者にも協力してもらいながら、受付業務の流れやノウハウをシステムに組み込むことができました。」(福重様)

総合窓口の効果

 総合窓口を実施して、市民から嬉しい言葉をいただきました。以下は市民の声の一部です。
「20年ぶりに再転入してきた。書かない事務は楽であり、すごいシステムなのですね。座って互いに伝えるのも、親密感があって素晴らしい。鹿児島川内の郷土愛を感じました。」(30代男性)
「子どもがいるので以前は書くのも大変であったが、これなら子どもと来ても手続きがしやすく便利です。」(20代女性)
「届出書を書くのは字が見えない。字がきたないのでいやであった。又どこに書けばよいか不明であった。年配者にとって以前よりはるかに便利であり、ありがたい。」 (70代男性)

 具体的な効果として、住民サービス向上の面では、「問診する内容や確認する事務手続きは均一化され、漏れのない、プッシュ型のサービスを提供できるようになりました。初めて窓口業務に携わった職員でも、システムの支援によって短期間で窓口対応ができるようになったことには驚きました。システムから出力される住民異動届や申請書によって、住民による記入を最小限に抑えられています。またシステムが複雑な要件を自動判定して、その住民に必要な手続きを確実に案内することができています。何より、住民の庁舎滞在時間が削減できていることは目に見える効果として挙げられます。総合支援型窓口システムは、今ではなくてはならない存在です。」(中野様)

 また職員負荷軽減としては、「経験の少ない職員もベテランと同等の案内ができています。限られた人員で、またマイナンバーなど新たな事務が増加しているなかで、効率的に事務を回すことができていると思います。」(福重様)

 さらに事務手続きの明確化として、「支所の窓口事務をいかに効率化していくか、また属人化を排除することで柔軟な組織運営に対応していくといった面でも、この取組みは継続的に効果を発揮すると考えています。」(瀬戸口様)


総合支援型窓口システムを使った受付の様子

今後の展望

 ただし、成果が出てきている一方で懸念材料もあるとのこと。
「システムによる自動判定のため、職員のスキル低下につながる恐れがあることや、システムトラブルが発生すると窓口が停止し住民が滞留する原因になること、また少しの事務量増加でも負担に感じる場合があるといった懸念があり、現在も継続して最適な窓口運営を目指して改善や課題解決に取り組んでいます。」(瀬戸口様)

 さらには、「繁忙期の窓口混雑については根本的な解決は難しいですが、継続的な改善をしていく必要があると考えています。市民課において一部の国民健康保険業務を対応していることもあり、様々な面での工夫が求められています。簡易届出書の利用や地場企業の一括届出推進といった、システム面以外の取組みも行いながら、限られた人員で住民サービスを低下させることなく、窓口事務を効率的に運営しようと日々努力しています。」(福重様)

 今後は、さらなる職員数減少にも柔軟に対応できるよう、「TV会議の活用やモバイル環境の整備を進めていくことを検討しています。現在も総合支援型窓口システムを活用して、本庁と支所間で情報を共有しサポートし合いながら事務を回していますが、さらに少ない人数で均一化したサービスを提供していくためには、環境面の整備が不可欠です。また本市では、証明書発行において平成25年3月よりコンビニ交付を開始しましたが、マイナンバーおよび住基カードの全体の交付率は25%程度となっています。しかしながら、その利用率は伸び悩んでおり、来庁されて証明書交付を受ける方がいまだに多いことから、J-LIS(地方公共団体情報システム機構)が提供する「窓口申請ツール」なども活用し、証明書発行のさらなる効率化にも取り組んでいます。」(瀬戸口様)

 マイナンバーサービスの普及により、自治体業務はさらに複雑化し、職員の負担も増えることが想定されます。しかしながら、「職員数は減少していくことになるので、いかに効率的に窓口を回していくか、まさに『働き方改革』が求められていると思います。クラウド化の推進やICT利活用によって解決できるものは積極的に検討していきますが、それだけではない自治体ごとの課題を職員一人一人が考え解決していくことが求められていると思います。」(中野様)


左から中野様、瀬戸口様、福重様

総合窓口という大きな一歩を踏み出した薩摩川内市の視線は、すでにその先を見据えているようです。


  • 上甑島から見た下甑島の
    鹿島に架かる建設中の橋

  • 下甑島 鹿島断崖と朝日


  • 上甑島の夕日

  • 下甑島 鹿島の夕日

(注)記載している職名等は2017年11月現在のものです。